繰り返すぎっくり腰は「腰だけ」ではない|評価から再発予防まで

「床にカバンを置いただけで、腰に激痛が走った」
「去年もやったのに、また同じことに…」

ぎっくり腰(急性腰痛)は、一度経験すると繰り返しやすいと言われます。

ですが、私たち治療家の立場から言えば、繰り返すのには必ず理由があります。

そしてその理由は、痛む「腰」そのものではなく、腰に負担を集めてしまう体の使い方の中にあることがほとんどです。

この記事では、当院院長が講師を務めた大手整体院グループの症例検討会で、

施術者同士で深く議論した「ぎっくり腰を3年繰り返している方」の症例をもとに、

評価 → 分類 → 原因の仮説 → 段階的な施術 → 再発予防という、

治療家が実際に行っている考え方の流れをご紹介します。

※お客様の情報は、ご本人が特定されないよう一部を変えています。

院長が講師を務めた症例検討会の参加者たち

この記事を書いた人

三島ほうゆう整体院 院長/柔道整復師・鍼灸師(国家資格)
臨床18年・のべ5万人以上の施術実績。大手整体院グループの症例検討会で講師を務め、現場の施術者に「評価に基づいた施術の組み立て方」を指導している。

ぎっくり腰を繰り返す方に共通すること

ぎっくり腰は、重い物を持ったときだけに起きるわけではありません。カバンを置く、顔を洗う、靴下を履く、くしゃみをする。

日常の何気ない動きがきっかけになることがとても多いのが特徴です。

きっかけが小さな動きだということは、その前から腰に負担がたまり、「あと一押しで限界を超える状態」が続いていたということです。痛みが引いても、この「負担がたまる体の使い方」が変わらなければ、また同じことが起きます。

症例:3年間、年1〜2回ぎっくり腰を繰り返していた40代男性

  • お仕事:事務中心のデスクワーク(1日約7時間の座り仕事)
  • 経過:3年前から年1〜2回ぎっくり腰を繰り返す。今回は床にカバンを置いた際に左腰を痛め、1〜2日動けず、これまでより回復が遅い。初診当日の朝、起き上がりで再び痛めた
  • 主訴:左腰の痛み。椅子からの立ち上がり・朝の起き上がり・寝返りで強く痛み、夜間に目が覚めることもある
  • 目標:短期は「日常生活の違和感をなくす」。長期は「ぎっくり腰を繰り返さず、趣味の釣りを再開する」

当院では、まず「何をしたいのか(目標)」を必ずお聞きします。今回の方の目標は釣りの再開。

釣りは座っても立っても長時間同じ姿勢が続くため、「その姿勢に耐えられる体」が施術のゴールになります。

私たちはここを見る:評価の流れ

痛む場所に施術をするだけでは、繰り返す理由は見えてきません。当院では、次の順番で体を評価します。

1. 姿勢の評価(視診・触診)

  • 正面:体が右に傾いている
  • 横:耳・肩・骨盤・足首の線が、理想的な姿勢のライン(ゴールデンライン)より前に出ている
  • 触診:お尻の上部と、左背中〜左腰に強い張り

2. 動きの評価:前屈と後屈を比べる

前かがみ(前屈)では途中で「これ以上は無理」と止まる一方、反る動き(後屈)はできました。

ここから「屈曲型」の腰痛と分類しました(詳しくは次の章で説明します)。

3. 整形外科的テストで股関節を確認

痛みが落ち着いた3回目に、股関節の検査を行いました。急性期の強い痛みがあるうちは、体に負担をかける検査は行いません。

  • オベールテスト:左のみ陽性。股関節の外側の組織が硬く、脚を後ろに伸ばす・内側に倒す動きに制限
  • パトリックテスト:左のみ陽性。最後の範囲でお尻の上部につっぱり感と痛み
  • 股関節の曲げ・開き:可動域が狭く、膝が胸につかない

4. 歩行分析と、腰以外の関節

  • 歩き方:左足に体重がのると体が左へ傾く(デュシェンヌ歩行)。右腕の振りも大きい
  • 右肩:横に上げると約100°で痛みが出て止まる(初診の約3か月前から)

このように、痛いのは左腰でも、評価をすると股関節と肩にも問題が見つかる。

繰り返すぎっくり腰は、局所以外にも問題があることはしばしば経験します。

腰痛は「屈曲型」と「伸展型」に分けて考える

腰痛は、どの動きで痛むかによって大きく分類できます。タイプによって負担がかかっている組織も、施術で狙う方向も、やってよいセルフケアも変わります。

タイプ 痛む動き 多い場面
屈曲型 前かがみ(腰を曲げる) 靴下を履く、顔を洗う、長時間の座り仕事、座った状態からの立ち上がり
伸展型 腰を反らす 立ちっぱなし、寝返り、反り腰の姿勢
混合型 どちらでも痛む 両方の要素が重なっている

今回の方は前屈で痛み、後屈は動けたため屈曲型と判断しました。あわせて、体の右への傾きが「痛みをよけるための一時的な姿勢」なのか「もともとの側弯」なのか「生活の癖」なのかも、痛みが落ち着いた後に再評価します。

原因の仮説:腰・股関節・肩は「対角線」でつながっている

評価の結果から、次の3つが重なって左腰に負担が集中していると考えました。

  1. 長時間の座り仕事:骨盤が後ろに倒れ(骨盤後傾)、腰が丸まった姿勢が続き、腰の筋肉(脊柱起立筋・多裂筋)が緊張し続ける
  2. 体の右への傾きと前のめりの姿勢:反対側の左腰が引き伸ばされ、背中〜腰の後ろ側に張りが出る
  3. 右肩と左股関節の硬さ:右肩が上がらないと背中(胸椎)が反れず、腰の後屈も制限される

体は、背中とお腹を通って「右腕と左脚」「左腕と右脚」が対角線でつながっています(ファンクショナルライン)。歩くときに右腕と左脚が一緒に動くのはこのためです。右肩が動かないと腕の振りが崩れ、反対側の左股関節が伸びにくくなり、その分の負担が左腰に集まる。これが今回の見立てでした。

痛い場所だけを施術しても繰り返す理由は、ここにあります。

腰だけでなく右肩と左股関節がつながっている図

施術は3段階に分けて組み立てる

「痛みを取る」「動きを広げる」「再発を防ぐ」を一度に行おうとすると、かえって回復が遅れます。当院では、今どの段階にいるかを判断し、その段階の目的だけを狙います。

施術の3段階(急性期・中期・長期)とゴールの図

第1段階:急性期(まずは悪化させない)

  • 前かがみの負担がかかる動き(膝を胸に抱える、深く曲げる)は避ける
  • うつ伏せになれれば関節を大きく動かさない手技から、難しければ横向きなど、痛みの出ない姿勢で施術する
  • 痛みの出ない範囲で「反る方向(伸展)」の動きを少しずつ取り戻す
  • 検査は前屈・後屈の確認など最小限にとどめる

屈曲型なのに反る動きを使うのは、反らせることが目的ではありません。座りっぱなしで失われた伸展の動きを取り戻すことで、骨盤が正しい位置に戻り、前かがみも楽になり、再発もしにくくなるからです。

屈曲型なのに反る動きを使う理由の図

第2段階:中期(動く範囲を広げる)

  • 左股関節:外側の組織をゆるめ、伸ばす・内側に倒す動きを出す
  • 右肩・背中:肩を上げる動きと、胸椎を反る動きを出す
  • 歩行:右腕と左脚が連動する歩き方を取り戻す(クロスアプローチ)

第3段階:長期(再発させない体をつくる)

  • 座り方の指導:骨盤が後ろに倒れていないか、左に体重がかかっていないかを確認・修正
  • セルフケアの習慣化:左股関節を伸ばす運動など、その方に合ったものを選ぶ
  • 姿勢の再評価:痛みが落ち着いた後に、立ち姿勢と歩き方の左右差をもう一度確認する

改善が止まった場合は、屈曲型の原因が「第5腰椎と第1仙椎の間の動きの固さ」なのか「お尻の筋肉の硬さによる骨盤の動きの制限」なのかを、追加の検査(PLFテスト)で見分けます。次の一手まで先に決めておくのが、評価に基づく施術です。

3回の施術での変化

  • 姿勢がゴールデンラインに近づいた
  • 後屈(反る動き)の範囲が広がった
  • 一方で、反ったときの怖さや、起き上がり・立ち上がりの軽い痛みは残っている

ここからが第2段階・第3段階の本番です。痛みが軽くなった時期こそ、再発しない体づくりに進む大切なタイミングです。

ぎっくり腰になったときの過ごし方

やってほしいこと

  • 痛みの少ない姿勢で休む:横向きで膝を軽く曲げる姿勢が楽な方が多いです
  • 起き上がるときは横向きから:一度横向きになり、腕で体を支えながらゆっくり起きます
  • 動ける範囲で少しずつ動く:ずっと寝たままよりも、痛みの出ない範囲で日常の動きを続けた方が回復が早いと言われています

避けたいこと

  • 安静にし過ぎない
  • 痛みをがまんしてのストレッチや筋トレ
  • 「治ったかな?」と、痛む動きを何度も試す

また、ぎっくり腰は波を打ちながら良くなっていくのが普通です。施術後に楽になっても、翌朝にまた固まって痛むことがあります。悪化したわけではないので安心してください。

デスクワークの方の再発予防

  1. 30分〜1時間に1回は立ち上がる:座りっぱなしが続くと、骨盤が後ろに倒れたまま固まっていきます
  2. 左右のお尻に均等に体重をのせて座る:足を組む・片側に体重をかける座り方は、片側の腰に負担を集めます
  3. 股関節の前を伸ばす:立った姿勢で片脚を後ろに引き、前の膝を軽く曲げて、後ろ脚の付け根の前を伸ばします。左右20〜30秒ずつ、痛みの出ない範囲で行ってください

※痛みが強い時期や、行って痛みが出る場合は中止してください。合うセルフケアはタイプによって異なります。

こんな症状がある場合は、まず医療機関へ

次のような症状がある場合は、整体ではなく、まず整形外科などの医療機関を受診してください。

  • 足にしびれや、力の入りにくさがある
  • 排尿・排便がしにくい、もれる
  • 発熱がある、安静にしていても強く痛む
  • 転倒や強い衝撃のあとに痛くなった

よくあるご質問

Q. ぎっくり腰の当日でも施術を受けられますか?

A. はい。急性期は関節を動かさない手技や痛みを悪化させない姿勢と方法で施術を行います。ただし、上の「医療機関へ」の症状がある場合は、先に受診をおすすめします。

Q. 冷やす?温める?

A. 痛めた直後で熱っぽさがある時期は冷やし、落ち着いてきたら温めて血流を促すのが一般的な目安です。迷う場合はご相談ください。

Q. 何回くらい通えばいいですか?

A. 状態や生活習慣によって異なります。程度によりますが週に3回のペースで通院されています。初回の評価で、今どの段階か・どのくらいの期間で何を目指すかをご説明します。

Q. 病院で「異常なし」と言われましたが、相談できますか?

A. はい。画像検査で異常がなくても、姿勢や動きの評価で原因が見つかることは多くあります。当院では、痛む場所だけでなく体全体の動きを評価します。

当院が大切にしていること

ぎっくり腰で来院される方の多くは「とにかく今の痛みを何とかしたい」というお気持ちです。もちろん、まずはそこを全力で和らげます。

ですが、私たちが本当に大切にしているのはその先です。

  • なぜ、この方は繰り返してしまうのか
  • その方が本当にやりたいことは何か
  • そのために、体をどう整えていけばいいのか

症例検討会で講師として施術者に伝えているのも、同じことです。症例を深く考えるのは、知識を増やすためではなく、目の前の方の体を根本から変え、再発しないように寄り添っていくため。

三島ほうゆう整体院では、この考え方を毎日の施術で実践しています。

急性期の痛みで終わらせず根本解決まで寄り添う図

「毎年のようにぎっくり腰になる」「痛みは引いたけれど、またなりそうで不安」
そんな方は、一度ご相談ください。今の痛みだけでなく、その先の「やりたいこと」まで一緒に考えます。

三島ほうゆう整体院・整骨院